グローブをはめずに行う。自分の手の平を相手の肩につける。右手は相手の左肩、左手は相手の右肩。
注意する点は爪で相手を傷つけたり突き指しないように、必ず手の平で行うこと。
いくら肩タッチと言えども、よけた弾みに顔面に手の平が当たる事も有り得るので、ガードをおろそかにしないこと。
まずは安全と言うのが魅力。それと試合と全く同じ動き(特に下半身)なのでスタミナがつく。
単純な肩タッチを成功させるのは容易ではないので、動きが機敏になるしステップが早くなる。サイドステップやフェイントが上手くなる。
拳を握った場合と手の平では距離が10cm近く違うので、手の平を当てようとすれば踏み込みが良くなる。
慣れて来たら肩だけではなく、みぞおち、わき腹にも手の平タッチをする。ボディブロックとその返しの攻撃を形良く行えるようにする。
更に慣れて来たら肩ではなくヘッドギアをつけて、おでこにタッチ出来るようにする。
先に5発当てた方が勝ちとして、競争意識を高める。
ボクシングで重大な事故が起きる可能性は、試合よりもスパーリングや練習中が多い。毎日頭部を打たれていればダメージは蓄積される。実力差があるのに真剣なスパーリング行えば尚更である。
私の教え子は卒業後プロボクサーになり、デビュー以来10戦全勝と言う輝かしい戦績で東日本新人王となったが、全日本新人王戦を前に練習中倒れ、引退せざるおえなくなった。当時はグッシーナザロフのスパーリングパートナーだった。
もう一人、母校の後輩はプロデビュー戦で後の日本チャンピォンで当時5戦全勝だった相手を破り、かなり期待されたのだが、ロッキーリンのスパーリングパートナーでやはり頭部を損傷。再起出来なかった。
拳を握らず、あるいは軽く打つマスボクシングと言う約束事の中で、本気で打ってしまって事故が起きる例も多い。軽いものだと気を抜いているところに強打を受けると、そのダメージは深刻なものとなる。後で約束事を破った事故ではなく故意の事件扱いになりかねない。
手加減が出来ない選手は力の抜きどころやパンチの強弱、リラックスする術を何時までも持てず、試合ではスタミナ切れや大振りになって成長しない。
軽く打つ約束の中で強いパンチが入ってしまうと負けん気の強い選手はやり返す。いつの間にかスパーリングに変ってしまう。先輩と後輩のマスで先輩がやってしまう例も多い。
コーチ、監督はスパーリングはもちろんの事、たとえマスでもレフェリーとして近距離で事故防止に努めなければならない。
実戦練習に勝るものは無いが後の長い人生に後遺症が残らないように、私達指導者は、リスクの少ない選手の実力向上に役立つ練習法を探し続けなければならない。