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チームトクボクシング教室の
省エネ

 
振り回すフックやアッパーに比べて、ただ肘を伸ばすだけで目標に当てる事が出来るストレートは、長距離で最短コースを最速で当てる最も有効なパンチである。
素人とプロの違いで最も際立つのはストレートを綺麗に打てる事だ。
ストレートパンチャーが成功すると言う事実は、過去の名ボクサーを振り返っても納得出来る。

私の記憶で最も代表的な試合は、薬師寺保栄vs辰吉丈一郎。
暫定チャンピォン対正規チャンピォンの試合で膨大なファンの応援と期待の中、意地とプライドが前面に現れ舌戦もヒートアップしてお互い絶対に負けられない試合となった。試合後販売されたDVDのタイトルにも「試合では無く戦争」と書かれたほどの好試合となった。

明暗を分けたのはストレート主体の薬師寺と多彩なコンビネーションを得意とする辰吉のボクシングスタイル。
ガードを高く固めてワンツーストレートの連打を打つ薬師寺は、内側からピンポイントで的確にストレートを当てる省エネボクシング。対する辰吉は下げたガードからストレート、フック、アッパーを多彩に織り交ぜながらどこから来るかわからない変幻自在なパンチを放つが、エネルギーの消費と下げたガードの甘さから、中盤次第に最短コースを最速で当てて、しかも省エネのストレートボクシングに対して劣勢となって行く。それでも終盤辰吉の頑張りと気迫で歴史に残る名勝負となった。

かつて私が指導した選手にフックとアッパーのつるべ打ちの名手がいた。当チームの「コンビネーション2」と呼ぶ技で、左フック右フック左アッパー左アッパー右アッパー左フックを何回転も打ち続けるのが得意な選手だった。彼がその攻撃を始めると殆どレフェリーストップで勝つ事が出来た。ある日、強豪との対戦でラウンド開始直後にその攻撃を仕掛けて、あっと言う間にスタンディングダウンを取った。後1回スタンディングダウンを奪えば試合が終了するその時、相手がワンツー連打で必死に応戦して来た。互角の凄い打ち合いが続く中で、次第に優劣がはっきりして来た。長距離で最短コースを最速でしかも省エネで当てるワンツー連打にフックとアッパーの連打がかなわなくなったので有る。回転力もワンツー連打の方が上で、ついに2ラウンド目に長い打ち合いに敗れて逆転RSCで敗れてしまった。


実際にストレートだけ打って試合に勝てるのならば
それに越した事は無い。


まずはストレート中心の安定したボクシングを身につけよう!

対象練習


・相手に左ストレートを打ってもらいその内側から右ストレートを打つ。
・相手に右ストレートを打ってもらいその内側から左ストレートを打つ。
・相手に左フックを打ってもらいその内側から右ストレートを打つ。
・相手に右フックを打ってもらいその内側から左ストレートを打つ。
どちらもアゴを引いて前傾姿勢(前かがみ)を守り、ストレートを打った時肩と肩の付け根部分が自分のテンプル、ジョー、チンをカバーしてくれるように打つ。

・相手に左フックを打ってもらう。左フックのモーションがかかったら左ストレートをカウンターで打つ。右のテンプル、ジョー、チンを左ストレートを打つと同時にカバーする。
・相手に右フックを打ってもらう。右フックのモーションがかかったら右ストレートをカウンターで打つ。左のテンプル、ジョー、チンを右ストレートを打つと同時にカバーする。
・相手に左ボディアッパーを打ってもらい左ボディアッパーのモーションがかかったら左ストレートをカウンターで打つ。左ストレートを打つと同時に右肘でボディをカバーする。
・相手に右ボディアッパーを打ってもらい右ボディアッパーのモーションがかかったら右ストレートをカウンターで打つ。右ストレートを打つと同時に左肘でボディをカバーする。

●相手のワンツーのワンを右ブロックパリー、ツーを左ブロックパリーして右ストレートを打つ。

●自由自在にストレートを打てるようにする。
・ジャブ1発、ジャブ2発、ジャブ3発、ジャブ5発を綺麗に打てるように練習する。
・ワンツー1回、ワンツー2回、ワンツー3回、ワンツー連打を綺麗に打てるように練習する。
・ジャブ1発からワンツー、ジャブ2発からワンツー、ジャブ3発からワンツー、ジャブ5発からワンツーを綺麗に打てるように練習する。

●左右ストレートを顔とボディに使い分ける。(以前書いた「上下攻撃とナイスボディー」参照)

●前に出て来る相手に対し、ステップバック、左サイドステップ、右ステップを複雑に織り交ぜながらストレート連打を打つ練習をする。自分のパターンを何通りも作る。